究極の造形美 国宝土偶「縄文の女神」

[山形県最上郡舟形町]
 今から約1万3000年前、氷河期が終わりに近づいて温暖化が進み、現在の日本列島の景観が整いました。そして、その自然環境に適応した人びとの営みが始まりました。縄文時代の幕開けです。1万年以上も続いた時代であり、日本の歴史上で、一番長く続いた時代です。縄文時代は、食べ物が豊富にあり、天変地異が起こらず、争いの無い社会であったようです。また、一人では生きられないことを知っていた縄文人はお互いを大事に思い、助け合いながら生きていたようです。このような暮らしの中で作り出した土偶や土器は、力強さと神秘的な魅力があり、日本のものづくりの源流ともいえる「縄文の造形」の極みであり、世界に誇る「縄文の美」であります。

 このすばらしい縄文時代に、「縄文の女神」がつくられました。現存する日本最大の土偶です。平成4年8月に西ノ前遺跡(町文化財)より出土し、調査が進められました。縄文時代中期の作とみられ、人の姿を究極まで象徴化しつつ、均整のとれた八頭身の美しさを誇る姿は、学術的にも造形的にも日本を代表する土偶です。安定した脚部は断面方形で長く伸び、横位の沈線が多条に描かれて、腰の付け根には五角形の区画文と複雑に入り組む文様がみられます。頭部は扇状に表され、眼や鼻などは表現されていないのが特徴です。わが町に、縄文時代のこうした高度な精神文化が芽生えていた大きな証となるものです。

 「縄文時代の土偶造形の一つの到達点を示す優品として代表的な資料であり、学術的価値が極めて高い」という理由から、「縄文の女神」は、発掘から約20年が経過した平成24年9月6日、国宝に指定されました。まさに名実ともに舟形町、山形県の宝であり、国の宝です。

 現在、「縄文の女神」は山形市にある「山形県立博物館」に展示されています。舟形町においては「舟形町歴史民俗資料館」にてレプリカを常時展示しています。